「あんなにひどいことをされたのに、優しくされると許してしまう」
「もう二度としないって言ったのに、また同じことが起きた」
「優しいときの姿が本当のあの人だと信じたい」
そう感じているあなたは、決しておかしくありません。
モラハラ・DVには「サイクル」があり、それがあなたを離れがたくさせているのです。
まずは、その仕組みを一緒に見ていきましょう。
モラハラ・DVには繰り返されるパターンがある
モラハラやDVは一度きりの出来事ではなく、あるサイクルを繰り返すことが多いと言われています。
心理学者レノア・ウォーカー博士が1979年に提唱したこの「暴力のサイクル」は、もともと身体的なDVの研究から見えてきたものでした。
そして臨床の現場では、身体的な暴力だけでなく、モラハラ(精神的虐待)の関係でも、よく似たサイクルが繰り返されることが指摘されています。
違うのは「爆発の形」。
殴る代わりに、怒鳴る、無視する、ガスライティングで現実を歪める──こうした心理的な「爆発」も、サイクルの一部として動いているのです。
ウォーカー博士が提唱したオリジナルのサイクルは「緊張の蓄積→爆発→ハネムーン」の3段階。
この記事では、そのあとに訪れる小康状態を「安定期」として加えた、4つの段階で説明していきますね。
第1段階:緊張の蓄積期
相手がイライラしやすくなり、些細なことで不機嫌になります。
あなたは「怒らせないようにしなきゃ」と、常に相手の顔色をうかがうようになります。
ピリピリした空気が続き、心も身体も緊張し続ける時期です。
第2段階:爆発期
蓄積された緊張が、いっきに爆発する時期です。
「爆発」の形は、関係によってちがいます。
- 身体的暴力:殴る、蹴る、突き飛ばす、ものを投げて脅す
- 精神的な爆発:激しく怒鳴る、人格を否定する暴言、何時間も説教する
- 静かな爆発:何日も無視する(サイレントトリートメント)、冷たい目線、ため息で支配する
- 現実を歪める爆発:ガスライティング(「お前の感じ方がおかしい」「そんなこと言ってない」)
身体的な暴力がなくても、これらはすべて「爆発」です。
あなたは恐怖と混乱の中に置かれ、心は深く傷つきます。
第3段階:ハネムーン期(和解期)
爆発のあと、相手は急に優しくなります。
「もう二度としない」と涙を流して謝ったり、プレゼントを贈ってきたり、驚くほど穏やかになります。
モラハラの関係では、こんな形で現れることもあります。
- 急に甘えるような声で話しかけてくる
- LINEや電話で、優しい言葉のシャワーを浴びせてくる
- 「本当はわかってる」「君だけが頼り」と本音っぽいことを言う
- 急に料理を作る、家事を手伝う、外食に誘う
この時期に見せる姿が、あなたが「本当のあの人」だと感じるものかもしれません。
第4段階:安定期(小康期)
一時的に穏やかな日常が戻ります。
「やっぱり大丈夫かもしれない」と感じる時期です。
しかし、やがてまた緊張が少しずつ蓄積され、サイクルは繰り返されていきます。
しおれちゃん
なぜ「ハネムーン期」が離れることを難しくするのか
このサイクルの中でもっともやっかいなのが、ハネムーン期の存在です。
爆発のあとに見せる優しさは、恐怖と苦痛のあとだからこそ、何倍にも強く感じられます。
心理学では、こうした極端な感情の振れ幅が、相手への強い「心理的な結びつき」を生むことが知られています。
これは「トラウマボンド」と呼ばれる現象で、まさに「離れたくても離れられない」状態をつくる正体です。
「あのとき優しかったから、きっと変わってくれる」「私がもっと上手くやれば、もう爆発は起きないかもしれない」
そう思うのは、あなたが弱いからではありません。
サイクルの仕組みが、そう思わせているのです。
加害者側の心理
加害者の側にも、心理的な構造があります。
その根っこにあるのは、加害者臨床の専門家ランディ・バンクロフトが指摘した「自分には相手を支配する権利がある」という信念です。
怒りやストレスが原因ではなく、その信念が、爆発の引き金になっているのです。
だからこそ、ひとつはっきり伝えたいことがあります。
どんな理由があっても、暴力(身体的・精神的どちらも)は正当化されません。
そして、相手が変わるかどうかは、あなたの努力ではなく、相手自身が向き合うべき問題です。
あなたは悪くない
「私が怒らせたから」「もっと上手に対応していれば」
そう思ってしまうかもしれません。
でも、暴力を振るう選択をしたのは相手であり、あなたの責任ではありません。
サイクルを知ることは、自分を責めるためではなく、今何が起きているのかを理解するためです。
理解することで、少しずつ冷静に自分の状況を見つめることができるようになっていきます。
「自分のせい」と感じてしまう、その理由
そもそも、あなたが「自分が悪い」と感じてしまうのには、ちゃんとした理由があります。
加害者は、爆発のたびに「お前のせいだ」「お前がああしなければ」と何度も繰り返してきましたよね。
その言葉が、あなたの脳に「自分が悪い」という回路を、くっきり刻み込んでしまっているのです。
これも、サイクルの一部です。
つまり、あなたが本当に悪いから自責の念が湧くのではなく、「あなたが自責するように、相手が仕向けてきた」からなのです。
「自分の至らなさ」と「相手が選んだ行動」は、別のもの
たとえあなたに「至らなかったこと」が一つや二つあったとしても、
それが相手の暴力を正当化する理由には、絶対になりません。
暴力(身体的なものも、精神的なものも)は、それを選んだ人の責任です。
あなたの行動の結果ではなく、相手が「そうする」と選んだ瞬間に、その責任は完全に相手のものになります。
安全を守るために
もし今、危険を感じているなら、まずはあなたの安全を最優先にしてくださいね。
- DV相談ナビ:#8008(最寄りの相談窓口につながります)
- 配偶者暴力相談支援センター:各都道府県に設置されています
- 警察:身の危険を感じたら、迷わず110番を
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応)
- オンラインカウンセリング:自宅から安全に、専門のカウンセラーに相談できます
モラハラの場合は、「身体的な暴力じゃないから、まだそこまでじゃない」と感じるかもしれません。
でも、怒鳴られる、無視される、心を削られるという「精神的な暴力」も、同じくらい深刻なダメージを残します。
相談することに「早すぎる」はありません。
電話のハードルが高いなら、自宅から安全に話を聴いてもらえるオンラインカウンセリングから始めてみてくださいね。
あなたの感覚を「気のせい」と片づけずに、ちゃんと受け止めてくれる場所があります。
📝 ここで触れた「モラハラ・DVサイクル」が、自分の関係にも当てはまる気がする方は、30問でモラハラの正体を本格的に診断するnoteで、ぜひ一度、自分の状況をはっきりさせてみてください。
もっと深く取り組みたい方へすでに「離れたいのに、離れられない…」段階に入っていると感じる方は、5つの理由から自分のタイプを見極め、関係を書き出して時系列で見える化する年表ワーク付きのnoteもありますので、よかったら取り組んでみてくださいね。
もっと深く取り組みたい方へほとりちゃん
あなたは悪くないからね。
まとめ
モラハラ・DVには「緊張の蓄積 → 爆発 → ハネムーン → 安定」というサイクルがあります。
身体的な暴力でも、精神的な攻撃でも、同じ構造で繰り返されていきます。
このサイクルが繰り返されることで、離れることがどんどん難しくなっていくのです。
でも、それはあなたが弱いからではなく、サイクルの構造と、トラウマボンドがそうさせているのです。
あなたは悪くない。
そして、この状況から抜け出す道は必ずあります。
まずは、今の自分の状況を「知る」こと。それだけで、あなたはもう一歩を踏み出していますよ。