「あんなにひどいことをされたのに、優しくされると許してしまう」

「もう二度としないって言ったのに、また同じことが起きた」

「優しいときの姿が本当のあの人だと信じたい」

そう感じているあなたは、決しておかしくありません。
DVには「サイクル」があり、それがあなたを離れがたくさせているのです。まずは、その仕組みを一緒に見ていきましょう。

DVには繰り返されるパターンがある

DVは一度きりの出来事ではなく、あるサイクルを繰り返すことが多いと言われています。心理学者レノア・ウォーカーが提唱したこの「暴力のサイクル」は、主に4つの段階で構成されています。

第1段階:緊張の蓄積期

相手がイライラしやすくなり、些細なことで不機嫌になります。あなたは「怒らせないようにしなきゃ」と、常に相手の顔色をうかがうようになります。ピリピリした空気が続き、心も身体も緊張し続ける時期です。

第2段階:爆発期

蓄積された緊張が爆発し、暴力や激しい暴言が起きます。身体的な暴力だけでなく、物を壊す、大声で怒鳴る、無視する、人格を否定するといった行為も含まれます。あなたは恐怖と混乱の中に置かれます。

第3段階:ハネムーン期(和解期)

爆発のあと、相手は急に優しくなります。「もう二度としない」と涙を流して謝ったり、プレゼントを贈ってきたり、驚くほど穏やかになります。この時期に見せる姿が、あなたが「本当のあの人」だと感じるものかもしれません。

第4段階:安定期(小康期)

一時的に穏やかな日常が戻ります。「やっぱり大丈夫かもしれない」と感じる時期です。しかし、やがてまた緊張が少しずつ蓄積され、サイクルは繰り返されていきます。

なぜ「ハネムーン期」が離れることを難しくするのか

このサイクルの中でもっともやっかいなのが、ハネムーン期の存在です。

暴力のあとに見せる優しさは、恐怖と苦痛のあとだからこそ、何倍にも強く感じられます。心理学では、こうした極端な感情の振れ幅が、相手への強い感情的な結びつきを生むことが知られています。

「あのとき優しかったから、きっと変わってくれる」「私がもっと上手くやれば、もう暴力は起きないかもしれない」——そう思うのは、あなたが弱いからではありません。サイクルの仕組みがそう思わせているのです。

加害者側の心理

DVをする側にも心理的な背景があります。自己肯定感の低さ、支配することでしか関係を維持できないという恐怖、自分自身の感情をコントロールできないこと——さまざまな要因が絡み合っています。

ただし、ここでひとつはっきり伝えたいことがあります。どんな理由があっても、暴力は正当化されません。そして、相手が変わるかどうかは、あなたの努力ではなく、相手自身が専門的な支援を受けて取り組むべき問題です。

あなたは悪くない

「私が怒らせたから」「もっと上手に対応していれば」——そう思ってしまうかもしれません。でも、暴力を振るう選択をしたのは相手であり、あなたの責任ではありません。

サイクルを知ることは、自分を責めるためではなく、今何が起きているのかを理解するためです。理解することで、少しだけ冷静に自分の状況を見つめることができるようになります。

安全を守るために

もし今、危険を感じているなら、まずはあなたの安全を最優先にしてください。

「まだそこまでじゃない」と感じるかもしれません。でも、相談することに「早すぎる」はありません。電話が難しいなら、オンラインカウンセリングで専門家に話を聴いてもらうという方法もあります。あなたの気持ちを受け止めてくれる場所は、ちゃんとあります。

まとめ

DVには「緊張の蓄積 → 爆発 → ハネムーン → 安定」というサイクルがあります。このサイクルが繰り返されることで、離れることがどんどん難しくなっていきます。

でも、それはあなたが弱いからではなく、サイクルの構造がそうさせているのです。あなたは悪くない。そして、この状況から抜け出す道は必ずあります。

まずは、今の自分の状況を「知る」こと。それだけで、あなたはもう一歩を踏み出しています。

ひとりで抱えている気持ち、誰かに聴いてもらうだけでも少し楽になることがあります。
「こんなこと話していいのかな」と思っても大丈夫。
あなたの気持ちを否定せず、そのまま受け止めてくれる場所があります。

言葉にするだけで、自分が本当はどう感じていたのか、少しずつ見えてくることがあります。